生前の不動産の名義変更

 ご相談として最近多く感じられるのが、ご自身が元気なうちに不動産の名義をお子さんに変えたいという内容です。新型コロナの影響でしょうか、不測の事態が生じた場合に備えてということをお考えの方が増えているのかもしれません。

 不動産の名義を変える場合、法律上の原因が必要となります。何の理由もなく名義を変えることはできません。例えば、あげる場合は贈与、金銭のやり取りがある場合は売買、という理由があることになります。

 そして贈与にしろ売買にしろ、それらを理由として単に名義を変えるだけならさほど難しいことではありません。しかし、不動産の名義を変える場合に必ず考えておかなければいけないことがあります。そう、税金です。

 不動産の名義変更があった場合、法務局から税務署へその情報が提供されることになっています。農地などの資産価値が低く見積もられている不動産ならともなく、それなりの広さの宅地などで贈与の場合、基礎控除110万円の枠では収まらないことも多いでしょう。となると贈与税の申告が必要になってきますが、このことを知っておかないと、ある日税務署からのお尋ねに驚いて話を聞いてみると、数十万円の納税が必要になってしまった、などということになりかねません。

 上記は贈与の場合でしたが、売買ではどうでしょうか。路線価と比べて適正な価格であれば問題ありませんが、例えば、「親子だし、市役所から毎年届く固定資産税の課税明細書の半分の金額でよしとしよう」、などとしてしまうと困ることになりかねません。

 親族関係のない者同士の売買の場合は、どのように値段を決めようが、当事者同士が納得しているなら問題はありません。しかし、親族間の場合、著しく安い値段での売買は、その差額分が贈与とみなされて贈与税がかかるおそれがあります。適正な価格が2,000万円の場合に、子供だから1,000万円でいいよ、としてしまうと、その差額1,000万円についての贈与があったとみなされかねない、ということです。(そもそも、何をもって「適正な価格」とするかが難しい問題ですが、税金の専門家ではないため、これ以上は掘り下げません。)

 こうしたご相談があった場合、当事務所では、上記のような大枠をお伝えしたうえで、税務署に一度ご相談に行かれることをお勧めしています。お手数ではありますが、これからご自身がきちんと把握されたうえで手続きを行うことで、しっかりと手続きが理解できてよかった、という感想を述べられる方もいらっしゃいます。

  ある程度のご年齢になられ、自分が所有する財産についてどのように管理・承継させようか、とお考えになることは素晴らしいことだと思います。こちらにも記載しましたが、ご自身の判断能力が衰えてしまってからでは資産が事実上凍結されるようなことにもなりかねません。生前贈与や売買以外にも、遺言や民事信託など、様々な方法があります。ご興味をお持ちの方は、一度お問い合わせいただければと思います。

 

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