相続不動産の共有
日本における遺言の利用率はまだまだ低いので、相続人が複数いる相続では、ほとんどの場合に遺産分割協議が必要となります。
遺産分割協議の内容は、相続人間で自由に決められるのでお好きに決めていただいて結構なのですが、できる限りやめた方がよいこととして次の点だけはお伝えしています。
それは、「不動産を共有にすること」です。
確かに、相続人にはその立場に応じて法定相続分が法律上決められています。たとえば、父・母・長男・長女の4人家族で父が死亡した場合、相続分は基本的には、母4分の2、長男4分の1、長女4分の1となります。預貯金等は簡単に分けられるのでよいのですが、不動産についてはこの割合で相続(=共有)してしまうと、のちのち面倒になる場合があります。
共有のデメリットとしては、以下のものがあります。
1 共有者の同意が必要になる場合がある。
当該不動産の現状維持のための行為(例:水道管の補修など大規模でない修理)は共有者一人でもできますが、他人に賃貸する場合には持分の過半数を持っている共有者の合意が必要になります。また、売却や大規模修繕の場合には全員の同意が必要になるため、一人でも反対すればできません。
「うちの家族は仲が良く、きちんと話し合いできるから大丈夫」という方もいらっしゃると思いますが、更に共有者が亡くなった場合、その方の相続人が共有者の地位を承継します。その方が結婚していれば、その配偶者も共有者となります。相続関係は死亡の前後により変化しますので、予期しなかった方が共有関係に入ってくるかもしれません。
2 関係者が増えて権利関係が複雑になる。
1で挙げたように、共有者の死亡により、その地位がさらにその相続人に引き継がれることになります。その遺産分割協議で一人だけを地位承継者にすれば共有者は増えませんが、間違って複数人で共有にしてしまえば、さらに関係者が増えることになります。年数が経って相続が進めば、顔も知らない人と共有関係になっていることもあり得ることであり、その場合は話し合い一つとっても大変になってしまいます。
司法書士等の専門家が関与している場合には、一部の例外的な場合を除いて、共有を勧めることはあまりありません。しかし、ご自身で、法務局の相談コーナーなどを利用して不動産の名義変更をされるような場合はご注意ください。法務局では手続それ自体の方法は教えてくれますが、そうすることで後々生じるであろうデメリットまでは教えてもらえません。共有にした後で、やっぱり一人の所有にしたいとなると、名義変更の問題だけでなく税金関係も含めて考えなければならなくなってしまい、より一層労力が増えてしまいます。
不動産の名義変更については、単に名義が変えられればよい、というものではなく、その後の手続や税金等と密接に関連するものですので、注意が必要です。
なお、共有にしてもよいと思われる場合があるので、最後にご紹介します。
それは、「当該不動産をすぐに売却してそのお金を相続分に応じて分配する場合」です。
すぐに売却するのであれば、当該不動産の管理等を考える必要がほぼありませんし、関係者が増えることもおそらくありません。各自の持分割合も登記記録上に示されますし、売買代金や売却に要した費用をその割合で按分して分ければよいので、わかりやすくもあります。
売買契約や売買代金決済に共有者全員が関わる必要がある点が多少難点といえますが、それも共有者全員がそろって手続することで透明性が確保されると考えればむしろメリットとも言えるように思われます。

